革製品の中でも、特に素材本来の風合いを楽しむことができるのがヌメ革。初心者には扱いが難しいのでは?と敬遠されてしまうこともありますが、ヌメ革ならではの経年変化は、とても味があり、革を育てる楽しみを堪能できます。
今回は、初心者の方にも挑戦しやすいようなエイジングのコツを含め、ヌメ革について解説していきたいと思います!
ヌメ革ってどんな皮革?
ヌメ革とは、植物に含まれるタンニンという成分で、鞣し加工を施した皮革のことです。使う動物はさまざまで、ヌメ革とは加工方法の一つを指しています。
ヌメ革は植物タンニン鞣し
革の材料となる動物の皮は、そのままでは腐ったり硬くなったりしてしまいます。そこで「鞣し」という作業を行うことによって、腐らず柔らかい革へと加工しているのです。
鞣しには薬品と物理的な刺激を与えることで、短時間で鞣すことができる「クロム鞣し」と、植物タンニンにじっくりと浸し、長い時間をかけて鞣す「植物タンニン鞣し」があります。ヌメ革に使われているのは、植物タンニン鞣しの方です。
植物タンニン鞣しは時間がかかるばかりではなく、コストもクロム鞣しの約2倍。さらに、染色や塗装などを行わず皮の持つ傷やシミなどを隠せない為、原料として上質な皮を選ぶ必要があるのです。手間とコストのかかる植物タンニン鞣しですが、クロム鞣しと比べ、経年変化(エイジング)が楽しめる魅力があります。
ヌメ革のお財布のメリット
まずはヌメ革のお財布のメリットを紹介しましょう。
目が細かく丈夫
ヌメ革は繊維の目がとても細かく、丈夫なのが特徴です。使い始めはやや硬く感じるかもしれませんが、使い続けるうちに生地の繊維がほどよくほぐれ、柔らかくなります。
経年変化(エイジング)を楽しめる
また、ヌメ革の一番の魅力は経年変化を楽しめることです。表面仕上げを行わないので、購入したてのヌメ革は艶があまりありません。
使用していくうちに手の脂が染み込んだり、紫外線や摩擦などの刺激によって油分が表面に浮き出てきたりして、光沢が出てきます。色は少しずつ飴色に変化し、使い続ければ使い続けるほど美しくなる革と言えるでしょう。
ヌメ革のお財布のデメリット
次にデメリットについて見ていきましょう。
水に弱い
革は基本的に水には弱いものですが、ヌメ革も例外ではありません、雨などには特に注意しなければいけません。
傷が付きやすい
表面に加工がされていないので、傷が付きやすいのが難点です。長く使うには正しくお手入れをしなければいけません。ここが、ヌメ革へのハードルが高い一番の理由かもしれませんね。
ヌメ革財布を育てる正しいエイジング方法
ヌメ革を上手にエイジングさせるには、乾燥を防ぎ、日光を上手に活用することです。初めこそ日光浴など手間はかかりますが、ある程度使っていくと革の表面はコーティングされ、お手入れも楽になります。基本的な方法を紹介しましょう。
【STEP1】革の汚れを落とす
ブラッシングと専用クリーナーを使い、まずは革の汚れを落とします。クリーナーにはスプレータイプ、クリームタイプ、消しゴムなどさまざまですが、使用後に革の表面に残ったものは拭き取ります。
仕上げにもう一度ブラッシングしておきましょう。
【STEP2】ヌメ革をムラなく日光浴させる
直射日光を避け、日が入る窓辺などに1ヶ月ほど置いておきます。夏場は早く色が変わりやすいので、様子を見て引き上げましょう。乾燥は大敵なので、やりすぎないように注意が必要です。
革に染み込んだオイルが表面に出てくるので、馴染ませるためにときどき乾燥した布で乾拭きします。ムラにならないように、日光が均等にあたるよう頻繁に角度を変えるのがオススメですよ。
【STEP3】クリームを塗って保護する
革には乾燥は厳禁。日光浴が終了したら保護するためのクリームをごくごく少量塗り、布で薄く広げましょう。風通しの良い日陰にしばらく放置し、クリームが乾燥したら乾いた布で拭いてください。
ここでも仕上げにブラッシングをしておきます。
【STEP4】防水スプレーのちょっとしたひと手間で完璧
水に弱いヌメ革ですから、できるだけ水から守りたいものです。一度水に塗れて水シミなどになった革財布は、元に戻すのが困難。最後にほんのひと手間、防水スプレーをすれば完璧ですよ。
【STEP5】毎日使う
そして何よりもエイジングに欠かせないのが、毎日お財布を使い続けるということです。使い続けるうちに手の脂などが染み込み、自然と表面を保護してくれるうえ、適度な摩擦熱でエイジングが進みます。
その後のお手入れは、①の部分だけでも十分。ときどき乾燥が気になったら③のクリームで保湿してあげましょう。
初心者にオススメの革メンテナンス用品
メンテナンス用品は初めて使う場合、何を買えばよいのかわかりませんよね。前述のエイジング方法で使うものがすべて揃った、初心者にオススメの基本的なセットを紹介したいと思います。
土屋鞄製造所/レザーメンテナンスキット
メンテナンス用品の主要メーカーであるコロニルの防水スプレーなどが入った、土屋鞄オリジナルのケアセットです。これさえあれば、他には何も買う必要はありません。大切な革を守る為に、信頼のおけるメーカーの、品質の良いメンテナンス用品を使いましょう。土屋鞄専用ポーチに入っているので、メンテナンス用品もさらに格上げしてくれますね。
革の専門家の「土屋鞄製造所」がメンテナンスキットの使い方を画像付きで説明してくれています。
まとめ
扱いが難しそうなヌメ革ですが、最初が肝心。あとは毎日使い続けることが、綺麗な飴色に育っていくポイントです。初心者の方もぜひ挑戦してみてください。他に二つとない宝物になること間違いなしですよ。